フリーアドレスのオフィスが増えてきているようだ。
これは、その人専用の席を作らずに共有の場所を用意し、各々が好きな(あるいは都合が良い)場所で仕事ができるようにしたものである。
うちの事業所の事務職(施設長、生活相談員、事務員、それに計画作成担当者兼生活相談員兼管理者兼介護職員である私)では、私一人がこのフリーアドレスになっている。
| 机などいらない?
私はもう何年も前から、書類を可能な限りデジタルで残すことにしている。
紙のままで背見出しを付けたファイルに綴じても、探し出すのは楽ではないことが多々あるし、場所も取る。しかしスキャンしてデジタル化し、適切なファイル名を付けておけば、検索は一瞬である。
それにクラウドに保存しておけばどこででも参照が可能。
そしてPCはノートを一台、専用に使わせてもらっている。請求ソフトも入れてあるので、これを持ち出せば、自宅でも請求業務ができるわけだ。個人情報保護の観点からは決して好ましいとは言えないが、ご勘弁を。そうしなければとても仕事が片付かないのだ。
2年前、今の施設長が赴任してくるまでは、私も事務室内に自分の机を持っていた。
しかし、施設長が事務室内で執務するときに机がないのでは不便だろうと、私は自分の席を譲った。施設長も、決して私のために退こうとはしなかった。
私の机だったところは少しずつ施設長のモノで埋まっていき、ある日、私は自分のモノを全て撤去した。
そもそも私はこの2年の間、勤務のほとんどが夜勤なのである。全然事務室にいない人間のために、机を一つ用意しておくなど合理的ではない。それは仕方のないことだ。
前述したように私はどこででも仕事ができる。だから、机がないこと自体に不満はなかった。
今は、事務日勤の日は、職員の休憩場所にノートPCを持ち込んで、そこで作業することが多い。テーブルが大きいので、請求業務の際など、いくつもの書類をチェックしながらPCに入力するのに便利なのである。
夜勤中は、食堂の机でノートPCを開いている。
| 書類が見つけにくくなった
そうは言っても、いざ机がなくなってみると、それはそれで不便なことはどうしてもあるものだ。
普段事務室にいないということは、郵便で送られてきたりする書類を複合機でスキャンするためには、事務室に行く必要が別に出てくるということでもある。
休憩場所から事務室への移動は面倒ではないが、夜勤中に持ち場を離れるのは簡単ではない。そもそも、目が離せない利用者さんというのは常にいるものなので、僅かな時間離れるだけであっても心配なものである。
その結果、スキャンする暇がなく、クリアファイルに入れたままで持ち歩く書類の量が増えてしまった。あれはどこだったっけ、と探すのも容易ではない。
自宅や車の中に置きっ放しだったこともある。
事務室以外で支障なく仕事ができるようにするためには、事務室内で勤務する時間も必要なのである。それがわかった。
| 一時的な保管場所がない
行政に書類を提出する際にも、最近ではデジタルデータをメールで送ることができるケースも増えてきた。
しかし、例えば指定更新の書類などはそうはいかないので、印刷して綴じることになる。作業中、これを全部持ち歩くのは分量もあって大変なので、これまでは普通に自分の机の一角を一次的な置き場所にしていたのだが、今はそれができない。
また、個人情報を扱っているなどの理由から、他の職員の目に触れさせるべきではない書類もある。これまでは引き出しに入れておけばよかったのだが、今はそれすらもない。
こうした書類は、段ボールに入れ、「この中の物には手を触れないで」と書いて、事務室の隅に置いておくしかなくなっている。仕事をする際には、その段ボールを抱えて、その日の作業スペースまで移動するわけだ。
この現実には、ときどき涙が出てくる。
| 居場所がない
最後は心理的なことだが、机がないということは、施設内に居場所がないと感じることにも繋がってくるものだ。
自分だけ居場所がないと。
| 現実的には
フリーオフィスは、現在の介護事業所ではなかなか難しいようである。結局のところ、机がないせいで私の作業効率はかなり落ちている。悲しいかな、いかんともしがたいのだが。